怒りと悲しみの矛先と、なくした記憶の断片

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前を向いて座ろうとしたらむすっとされた。仕方ないから、彼と向き合う形で膝の上に腰を下ろした。 「バンザイして」 「何で?」 「いいから」 にっこりスマイルで微笑みかけられ、胸がキュンと疼いた。その笑顔、ある意味それ反則だから! 「睨む顔もなかなか可愛いな。変な事はしない、約束する。その、火傷した所、触ると痛いだろ?だから、肩に置いて」 「うん」 言われた通り肩に置くと、背中に彼の腕が回ってきてむぎゅと抱き締められた。 「ナオに見下ろされるのもなかなかいいものだな。それにしても、こうしてるとすごく落ち着くーー」 胸元に顔を擦り擦りさせてきて、満面の笑みを浮かべる彼。背中にちくちくと突き刺さる視線がこれまた痛い。 光希さんに睨まれているんだろうな。きっと・・・ そう思いながらぐるりと回りを見回すと、昆さんと目が合った。 「兄弟仲良く、こんな所でいちゃつかないで頂けますか?」 溜め息を吐きながら、やれやれという表情を浮かべる昆さん。 「羨ましいだろう。俺の、光希」 「せいぜい飽きられないようにしてください」 「お前に言われたくない。あっ、そうだ!明日、お前一人で帰れ。俺、光希としばらくここに住むから」 「はぁ!?」 昆さんの表情がみるみるうちに険しいものへと変わっていった。
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