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「あの子がいいな」
恰幅のいい男性の背後からぬっと姿を現したのは背の高い、華やかな雰囲気を纏った若い男性。一切迷うことなく男の子を指差した。
「礼さん、別室に選りすぐりの可愛い子達を控えさせてます。そんな陰気臭い子より」
予想外の事に園長の額からは大量の汗が噴き出していた。
「可愛いだけの子はそれだけ飽きるのも早い。普通の、どこにでもいる男の子を、そう頼んだはずではす。あの子の名前は?」
「礼さん、も、勿論、普通の子達をご準備致しました。と、取り敢えずそちらに案内しますので」
慌てふためく園長を男性は冷めた目で一瞥した。
「名前は?」
語気をやや強め、鋭い眼光で園長をじろりと睨み付けた。
「ーーナオヤです」
かなり間が空いて園長が男の子の名前を口にすると、男性は駆け足でその男の子に歩み寄った。
「おいで、ナオ」
笑顔で話し掛けると、事態が上手く飲み込めず、きょとんとしている男の子を抱き上げた。
「うちに帰ろう。これよりももっと大きいクリスマスツリーがあるんだ。ケーキも、ご馳走も、あと、プレゼントも用意してある」
男性は、近くに控えていた大柄の別の男性にあとは頼んだ、そう言うと男の子を連れどこかに向かった。
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