涙に沈む

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ここは・・・どこ? 次に目が覚めた時、暖色系の天井とカーテンがまず目に入って、それから、椅子に座り僕の片方の手を握り締めたまま眠る信孝さんの姿が目に入った。彼の指にはお揃いの指輪が嵌められていた。 「の、ぶ、た、か、さ・・・ん・・・」 力が入らないもう一方の手を必死で伸ばし、爪先がようやく彼の髪に触れた。 「ごめんね・・・こんなにも大好きなのに・・・ごめんね・・・」 穏やかな寝顔ですやすやと眠る彼に何度も繰り返し謝った。男としてのプライドを踏みにじられどれだけ傷付いたか予想すら出来ない。腸が煮えくりかえるくらい怒り狂っただろう。 彼が起きた時、どんな反応されるか怖い。合わせる顔がない。それなら、彼が起きる前にここからいなくなれば、彼の怒った顔を見ずに済む。でも、どうしよう・・・点滴のチューブが巻き付いている腕に目が行った。これじゃあ、逃げられない。 「ナオさん、目が覚めたようですね」 もぞもぞ動いていたら、カーテンが開いて昆さんが姿を現した。 「過呼吸の発作を起こし、意識を失って、この病院に緊急搬送されたんです。まる三日、ずっと眠ったままだったんですよ。彼、ほとんど寝ないであなたの側に付き添っていたんです」 「そんな・・・ごめんなさい・・・僕のせいだ・・・僕が悪いんだ・・・」 「悪いのはナオさんじゃない。その事は、信孝も十分承知していますよ」 「え!?」 「龍成さんに言われたでしょう。縣尚として生きろと。彼もすべて知った上で、過去には拘らないーーそう言ったんですよ」
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