千秋と満ちる

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 手厚い治療は有り難いが、顔の治療だけは何としても断りたいし、断らなければならない。別人の顔にされたら、それこそ自分自身を否定されてしまうのだから。  必死なって訴えようと試みたが、そのたびに失敗していた。それに何故か五十嵐は千秋が満ちるではないと知っているような気がした。それなのに、そのことを彼は必死に隠そうとしている。  現在、仰々しく両腕足、顔にも包帯が巻かれているが、実は火傷の状態はそこまでひどくないはずだ。特に顔は炎に巻き込まれた際、咄嗟に掌で顔を隠したため損傷は最低限に済んでいるはずだった。  ベッドから起き上がれるようになった千秋は、車椅子で移動したリビングルームで意外な物を見つけた。 ――ま、まさか、そんなはずがない!  リビングに飾ってある写真を見て驚いた。何故ならば一智の横で笑顔を向ける女の顔は千秋にそっくりだったからだ。  だが、よく見ると自分によく似た顔だが、どこかピントが合っていないような気がする。千秋・サルトレッティと同一人物とは言いがたく、二人が並んだら姉妹のような感じに見えるかもしれない。  生まれたばかりのくる美を抱いているということは、この女は満ちるしか考えられなかった。 ――でも、どうして満ちるが私と同じ顔に?
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