千秋と満ちる

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 それから包帯のせいで思うように身動きが取れない千秋に、立て続けに災難が起きる。もしかしたら誰かが私を殺そうとしているかもしれない。いや、私でなく私と入れ替わった満ちるを殺すつもりなのだ。  でも、ここにいるのは千秋・サルトレッティで、飯島満ちるではない。それなのに、千秋はその事実を伝えることができないでいた。  いつもようにベッドに入り眠ろうとすると、枕元に果物ナイフが隠してあった。これは何かの警告なのだろうか、それとも悪戯だろうか? 見えない相手の不気味な行為に、千秋の不安はますます膨らんでいく。  それからしばらくして、千秋は一階のリビングルームで、庭で遊んでいるくる美の様子を見ていた。今時のバリアフリー対応などない邸宅には、リビングルームと庭の境に二十センチほどの段差があった。  すると、次の瞬間―― いきなり後ろから車椅子を押されて、段差に車輪が取られてそのまま転倒してしまった。 「あぁっ……」 「ママ!」  クルミの叫び声気づいた一智がすぐさま駆け寄り、怪我をしていないか千秋の体を探る。 「大丈夫か?」  ヘルパーの浜村も慌ててやって来て、心配そうに様子を尋ねた。 「だ、大丈夫でしょうか? 申し訳ありませんでした。私が車椅子の制御ブレーキをかけ忘れてしまったものですから……」 「少し痛い思いをしたようだが、大丈夫のようだ。一時帰宅ではこういうトラブルも起こりうると事前に忠告されていた。それをすっかり忘れていた我々の落ち度だ、そんなに気にしないでください」
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