一智と千秋

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 亡き夫ジャンカルロと、満ちるの夫である一智―― 似ても似つかない二人の男性の間で、千秋は思い悩んでいた。  満ちるに対する冷たい態度は、彼女の浮気が原因だったようだ。しかも、くる美は夫の子供ではないという噂まである。それを家政婦たちの世間話で聞いてしまった千秋は動揺していた。  学生時代の大親友がいつの間にか悪女に変化していた。今の満ちるについて知っていたことは氷山の一角で、教えてもらった話のほとんどが偽りだった。  飯島一智は誠実で元高校野球のスター選手で大企業の社長という肩書まである。彼は成功者にいがちな好色なタイプではなく、どちらかというと堅物過ぎるくらいに真面目な男のようだ。その生真面目さゆえに、満ちるの手玉に取られてしまったのかもしれない。  一智は家族を愛し、娘を愛し、妻も愛していたのだろう。でも、その愛が満ちるにとっては物足りないと感じていたのかもしれない。千秋が聞いた今の満ちるは享楽的で、刺激を求める向上心の強そうな女性だった。  だが、学生時代の彼女も家にいるだけの専業主婦に収まるような性格ではなかったような気もする。  愛する夫と子供がいれば満足だという自分とは違うと、千秋は改めて思い返していた。でも、そんな千秋には夫も子供もいない。
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