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第一章
昼寝の時間が来たのにガキの誰も寝ない。昼寝当番の昼寝は数少ない役得なのに。指さしのレンなどはおやつが少ないのは昼寝している間に俺が盗み食いしているだから見張るんだと息巻いている。誤解もいいところだ。確かに昼寝の時間に抜け出してはあるがそれは俺が買ったもので、何の関係もない。人が昼ぬきなのを忘れて誤解する。ガキの思いこみにはつきあいきれない。
「とにかく横になって。はいはい」
シン先生が助け船を出してくれた。ガキの頭をなで、おでこを押さえたり、抱いたり、子供の扱いに間違いがない。彼女ならとにかくこの場を納めてくれるだろう。
「はあい、今日もファン先生じゃない、ファンさんが本を読んでくれますよ、読む本は、」
「“大魔術師ルービンの部屋”がいい」
逆さめがねのケン、大魔術師って響きはいいけど、料理本だぞ。魔術といっても味の魔術だからな。
「“いなくなった仲間たち”がいい」
三つ編みのラルーだな、この本は悲しいよな。絶滅した動物の本。泣き虫なのに好きだよな悲しい話が。
「新しいお話がいい。うそ話でいいからさ」
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