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つるのおんがえし株式会社
青海 嶺
むかしむかしあるところに、じさまとばさまが住んでおったと。
じさまは猫の額ほどの小さな田を作り、倹しい暮らしを立てておったそうな。
ある朝のこと、じさまが山へ向かっていると、田んぼの稲穂の陰で、バサバサ、バサバサバサと、何かが暴れている。田んぼに入って近づいてみると、矢を受けて傷ついた鶴が、もがき苦しんでおった。
なんと旨そうな鳥! という思いを払い除け、じさまは、有名な昔話を思い浮かべた。
「おお、可哀想に、さぞや痛いであろう。今、その矢を抜いてやるから」
その話は、村人たちに、高邁なる動物愛護精神を涵養すると同時に、うまくゆけば思わぬ不労所得を手にできるという、なまぐさい期待をも植え付けておったのじゃ。
矢を抜いてやった鶴は、しばらくじっとしていたが、やがて大きく羽ばたくと、山の彼方へと飛び去った。その健気な後ろ姿を見送りながら、じさまには、すでに、鶴が若いおなごに化けて、我が家を訪ねてくる様子が目に浮かぶようじゃった。
じさまは鶴から引き抜いた血の付いた矢尻を眺めた。その下手くそな細工は間違いなく、村はずれの掘っ立て小屋に暮らす与ひょうの仕事。
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