つるのおんがえし株式会社

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 その後も京の都からの注文は増え続けた。じさまはさらに織り手を増やした。設備投資もした。そして、ついに「つるのおんがえし株式会社」を設立。じさまは代表取締役社長に、ばさまは取締役経理部長に、つゆは製造部長に、与ひょうは調達部長にそれぞれ就任した。そして、翌年には東証一部に上場する優良企業としてアパレル業界に確固たる地位を占めたんじゃ。  とはいえ経営に波風が立たなかったわけではない。最初の試練はお約束の労働争議である。どこぞの主義者(アカ)に唆されたのか、鶴たちが組合を結成、ストライキ、ブロックアウトと、闘争を展開。 「そもそも我々は、働かなければ焼き鳥だと脅されて、強制労働をさせられているのではないか! 何が優良企業だ! 重大なる人権侵害に断固抗議すべし!」 「しかし、人権といっても、うちらは鳥類じゃしなあ」 「では動物虐待でどうじゃ!」 「動物愛護協会に動いてもらうのはどうだろう」  救済を求める手紙は、紙がないので、文字を織りこんで、布で書いた。     
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