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ここで、鶴である娘らにどうやって手紙が書けたのか、と疑問をもつ方もおられよう。もっともな疑問である。そもそも、じさまばさまにしても、ほぼほぼ文盲に近い庶民であったのだから、彼らから文字を学んだとも考えづらいのである。さらに、そんな読み書きもできぬ老人たちがどうして株式会社を設立できたのかと疑問を持つ向きもおられよう。まことにもっともな疑問である。そこはそれ、蛇の道は蛇、世の中には代書屋という種族がおり、法外な金をふんだくって書類作成を代行してくれるのである。おそらくじさまたちはそのような代書屋にかなりの財産をかすめ取られていたのではないか、というのが、歴史学者たちの一致した見解である。(そもそも鶴がどうして人間に化けて言葉も喋れるのか、という根源的疑問については、聞かぬが花というもの)
閑話休題。
書き上げた手紙を誰に託すのか。密使の選定が問題となった。
「俺が行ってやる」とヤギ。
「お前は駄目だ。配達すると見せかけて全部食っちまうからな」
みんなは、ヤギさん郵便の悲劇を忘れてはいなかった。
結局、野鳩が経営する「山鳩ポッポの宅空便」に依頼し、郵便は無事配達された。
ややあって、動物愛護団体が大挙して村に押し寄せた。しかし、じさまも腐っても経営者。動物虐待をやめろ、動物の権利を守れという彼らの主張を、堂々と退けた。
「いいですか皆さん。これは産業動物であってペットではないのですよ。愛玩などするべき対象ではないのです。産業動物の利用を止めよというのなら、まず南蛮の国々に行って、牛肉を食べるのをやめさせてごらんなさい。それができたならウチも考えないではないですわ。わっはっは」
血の滴るような牛ステーキ大好きの南蛮人を頭とする動物愛護団体であったから、彼らは白い顔を赤くして、スタコラサッサと退散したそうな。(当時の動物愛護運動はまだ、自分のことを棚に上げて相手を糾弾する現代の運動家ほど面の皮が厚くなかったようじゃ)
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