つるのおんがえし株式会社

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 ばさまは面白くなかった。つゆは家事をしなくなり、食って寝ているばかりに見えた。じさまは何かにつけては、つゆ、つゆ、と下にも置かぬ可愛がりっぷり。じさまは金のためじゃと言うが、その必死の看病ぶりがばさまには、どうにもただごとではないように見えたのじゃ。  夜、ばあさまは、夢を見た。織機の鎮座する娘の部屋で、あの若くて綺麗なつゆとじさまとが、裸で絡まりあって、乳繰りあっている姿じゃ! びっしょり汗をかいて飛び起きたばあさまは、たしかにその光景をこの目で見たと思った。虫の知らせ。隣をみると、案の定、じさまの布団はもぬけの殻。やはり、やはりそうか! ばさまは台所から包丁を持ち出し、物音も立てずに、娘の部屋に忍び寄り、そっと中を覗いた。  じさまはいなかった。気が抜けてへたりこんだばさまは、見事な織物が出来上がりつつあるのを見た。それを織っていたのは、全身の羽が抜けて、見るも無残な一羽の鶴じゃった。鳥の丸焼きの下準備で、下っ端の料理人に毛をむしられたかのような哀れな姿。ばさまは息を呑み、声に鳴らない悲鳴を上げた。鶴が振り返り、 「こんな恥ずかしい姿を見られたからには、もうここにはいられません」  その言葉を聞いて、ばさまは我に返った。わしは、なんという愚かなことを。 「つ、つゆや、ちょっと待ちなされ。バックスペース! アンドゥー! アンドゥー!」     
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