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そのぶん研究に打ち込んだ。信じられないことに解析を始めてわずか半年で論文を投稿し、わりとすんなり受理された。査読者2人のうち1人の1度目のコメントはいささか厳しかったものの、むしろそのコメントのおかげで、論文はさらにいいものに仕上がった。
論文の投稿中に開催された国際学会でそれに関係する内容をポスター発表していたら、見知らぬドイツ人の研究者から声をかけられたのだった。あとでなんとなくわかったのだが、実はその人が査読者のひとりだったらしい。
ドイツに来て一緒に研究をしないかというオファーを受けたのは論文が受理された直後だった。自分の専門の気象・気候分野ではなく、河村教授や森野さんが専門とする植生分野の研究所だった。河村教授を訪ねたのも、今回の論文で森林と大気との関係を調べたのも、森林が従来考えられているよりもずっと能動的に環境に影響を与えているのではないかという、かなり思いつきに近い自分の仮説を調べたいと思ってのことだった。そういう意味では、願ったり叶ったりのオファーだった。ただ、ドイツ語はほとんどできなかったし、英語を話すのも得意ではなかった。初めての海外勤務のうえ、元々の専門とは違う分野の研究所だ。だから、少なからぬ不安はあった。でも、河村教授を訪ねてからの何か不思議な流れみたいなものがあったし、それに自分のやりたい研究に近づけるのだ。引き受けないという選択肢はなかった。
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