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Side-K②
ひたすら車を走らせる。
駅から割と近い場所にある(と言っても家からだと車でゆうに四、五十分は掛かるけど)ショッピングモールに奈美を送り届けてから、すぐにあいつに発信した。
車にキーを差し込むのも、もたつくほど焦っていた。しかもあいつは出ないし。やっと出たと思えば、あと二十分後のバスに乗らなきゃいけないだと? 間に合うわけねえだろ!
――とは言えない。だって絶対あいつバス来たら乗るし。
どうしようどうしようと、焦る気持ちばかりが先行して冷静になれない。
「……バス、駅……えき?」
はっとして、周囲をぐるっと確認し、元来た道をUターン。そうだ。どうせあいつも駅に行くんだ。それなら俺が駅に着く方が早い、というか間に合う。
車の時計表示に目をやれば、あと五分でバスが来るという時間になっていた。涼いわく、運転中の携帯は違反……なんだよな?それなら――
周囲を確認し、路肩に車を寄せ、急いでメールを打った。
『えきてまってる』
何か間違えたような気もしたが気にしていられない。
『送信』
送信完了を確認してから、すぐに車を発信させた。携帯は助手席のシートにサブ液晶画面が見えるように置いた。
少しして携帯が振動する。
『安東 涼』と、あいつの名前が表示されてから間を置かずに『坂田 奈美』と表示された。しかも着信のようだ。
あと十分も掛からず駅には到着できそうだ。あいつは、バスで駅まで四十分以上掛かるはず。
俺は再び車を寄せて停車させ、携帯を開いた。
「……おー」
『おー、じゃないよ。今どこ?耕平の行きそうな辺り見たけど居ないんだもん。買い物終わったから帰ろうよ』
「ごめん、奈美。今ちょい駅に向かってるんだ」
『……はあ?何で?』
「ごめん、訳は後で話す。帰りはバスで頼む」
『ちょ、耕平!バスって、まだ三十分は待つんだけど?!』
「ごめん」
通話口から奈美の抗議の声が響く。通話を切ることで、それを無理矢理遮った。
あいつからのメールを開封すると、『解りました。駅て待ってて下さい。』とわざとらしい文面が返って来ていた。
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