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俺以上に機械音痴で、携帯なんて見るのも嫌だと言っていた奈美。奈美は、所謂今時の容姿と言うか、言ってしまえば見た目は思い切りギャルだ。茶髪に巻き髪。そんな奈美が携帯を敬遠するのもチグハグしてるようだが、とにかく好きではないらしい。一応、持ってはいるようだが。
だからこそ俺だって、特別、携帯電話なんてものを意識せず生きて来られたわけだし。あったら便利かもと思わなくもなかったが、こんな田舎だし、なけりゃないで十分生きていけるものだ。
携帯電話なんて今更、欲しくもなんともなかった。
― じゃあ、今から買いに行きますか?
― 違う、そのボタンじゃないって何度言ったら……ああ、もう!
― 折角、久しぶりの帰省に俺は先輩のお守りですか…
― 試しに彼女さんに送ってみたら良いですよ。
― 本当に先輩は……変わらないですね。
涼。
俺は、その時間が欲しかった。
決して開けてはいけない、開けまいとしていた蓋が、ずれて落ちていくのを感じた。
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