Side-K①

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 俺以上に機械音痴で、携帯なんて見るのも嫌だと言っていた奈美。奈美は、所謂今時の容姿と言うか、言ってしまえば見た目は思い切りギャルだ。茶髪に巻き髪。そんな奈美が携帯を敬遠するのもチグハグしてるようだが、とにかく好きではないらしい。一応、持ってはいるようだが。  だからこそ俺だって、特別、携帯電話なんてものを意識せず生きて来られたわけだし。あったら便利かもと思わなくもなかったが、こんな田舎だし、なけりゃないで十分生きていけるものだ。  携帯電話なんて今更、欲しくもなんともなかった。 ― じゃあ、今から買いに行きますか? ― 違う、そのボタンじゃないって何度言ったら……ああ、もう! ― 折角、久しぶりの帰省に俺は先輩のお守りですか… ― 試しに彼女さんに送ってみたら良いですよ。 ― 本当に先輩は……変わらないですね。  涼。  俺は、その時間が欲しかった。  決して開けてはいけない、開けまいとしていた蓋が、ずれて落ちていくのを感じた。
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