ついてない私と、仏像男子

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 結局こうして、明日まで部屋に入れなくなった。  でも、これでよかったのだ。鍵を失くしたのは私のミスなのだから、大家さんの楽しい時間を邪魔してはいけない。  幸い財布にはカードも入っているし、スマホの携帯用充電器もある。着替えがないのは痛いが、下着さえどこかで買えば服は一日くらいそのままでいいだろう。それで漫画喫茶でも行って、一晩過ごせばいいだけのことだ。  アパートの階段を下りて再びバス停へ向かう。  バスの定期があるから、この範囲で行けるところへ行って最後に漫喫に行って泊まろう。別にこのくらいで泣きたくなるようなヤワな女じゃないけれど、ちょっと堪えた。だって、ここ最近の私の運の無さったらすごいのだ。  私はこの街にある中規模建材メーカーの事務職として働いているのだが、とにかく最近仕事がうまくいかない。  大学を卒業して入社五年目、後輩の指導担当になったあたりから急に思うようにいかなくなり始めた。  私が指導担当になった後輩は、入社当時から社内を騒がせていたいわゆる困ったちゃんで、彼女の指導に時間を取られすぎて自分の仕事に手を付けられないのだ。なんでよりによって私がこの子の担当になってしまったのかと文句を言いたいけれど、一応大人なのでぐっと堪えている。同期相手に愚痴は零すけれど。  仕事がうまくいかないと、並行して私生活も駄目になる。  つい先週、一年付き合った彼氏に振られたのだ。これは運というより私に男を見る目が無かったせいだが、それはまあこっぴどく振られた。  友人の紹介で出会った元彼は、顔も性格も平均的な“良い人”だった。いや、だと思っていた。  同棲したりだとか毎日連絡を取ったりだとか、そこまで密な付き合いはしていなかったから別れても大した痛手にはならなかったけれど、別れ際に私の悪い所を十個くらい連射された。それが堪えたのだ。  批難されるというのは、私みたいに男勝りな女でも辛いものである。ましてや、一度好きになった相手に言われればなおさら。
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