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「ちゃんと告白したら、付き合おうってことになるのかなぁ……いやでもいくら可愛くてもゲス野郎だしあんなの毎回されてたらほんとに頭おかしくなるし……そもそも付き合う気はないって言っちゃったしなぁ……」
「三好先輩?」
「えっ? わっ、うわあっ!!」
はっと現実に帰ると、目の前にメイクをばっちり施した後輩の顔があった。柄にもなく大声を出して仰け反ると、彼女の方がそれに驚いたようで「きゃっ!」と女の子らしい声を上げる。
「あ、ご、ごめん赤坂さん! ちょっとびっくりして……!」
「それはいいんですけど……大丈夫ですかぁ? ぶつぶつ何か言ってたんで超怪しかったですよぉ」
「え……こ、声に出てた?」
「はぁい。告白とか、付き合おうとか。もしかして彼氏でもできたんですかぁ?」
話しかけてきたのは、私が指導担当についている後輩の赤坂さんだった。
彼女が入社して約三カ月、私の悩みは倍増した。それはもちろん彼女のせいに他ならない。
「そういうわけじゃないよ。それより珍しいね、赤坂さんが私に話しかけてくるなんて」
「だってぇ、先輩朝からおかしいんですもん。いつもはあたしがミスしたらすっごい怒るのに、今日はため息ひとつで済んだしぃ。逆に調子狂っちゃう」
「……私のコンディションに関わらず、ミスしないようにしてくれるかな」
そう。彼女はどういうわけか他の後輩と比べて圧倒的にミスが多い。しかもそれを反省していない。
同じミスを繰り返す彼女を叱ると、「すみませぇん、あたしゆとり世代なんでぇ」なんて免罪符のようにゆとりを持ち出してくるのだ。
馬鹿野郎、私だってギリギリゆとり世代だ。台形の面積の求め方なんて習ってないし総合の時間だってたっぷりあったわ。
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