祭りの夜と、新しい関係

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祭りの夜と、新しい関係

 お昼休憩の時間、私は一人コンビニで買ってきたサンドウィッチを食べながら一冊の本をぱらぱらと捲っていた。  本のタイトルは『美坊主が解説! 仏像入門ガイドブック』。イケメンのお坊さんたちの写真入りで、分かりやすく仏像の解説をしていくという世の女性たちになかなか人気の本らしい。お察しの通り、蓮くんに借りたものだ。  普段であれば同僚たちと社外に出て定食屋さんやカフェでランチをするところだが、今日はそれをパスした。それは別にこの本を読むためではない。一人きりで考え事をしたかったからだ。  というのも、土曜日に蓮くんの家に泊まってから沸き起こった疑問が頭から消えてくれないのだ。ずばり名前を付けると、「蓮くんと私はセフレなのか問題」。我ながらセンスがない。  そういう取り決めをしたわけではない──と思うのだが、私は彼と出会ったその日に「一晩だけ相手をしてほしい」と頼み込んでしまった。それだけ見ると単なる体の関係ということでOKだ。世間的に見ればOKじゃないけど。  しかしその後、蓮くんは言った。「一晩だけじゃなくてずっと好きにさせてほしい」と。まあ、その言葉だって体の関係を継続したいという意味にとれる。現におとといの土曜日の夜までは私だってそう思っていた。  問題はその後。蓮くんの嫌になるほどねちっこい愛撫のあと体を繋げながら、私たちは付き合いたてのカップルみたいに「好き」を連呼しながら果てた。当事者である私にも意味が分からない。  蓮くんはなんで好きなんて言ったんだろう。  私だって、なんで好きなんて言っちゃったんだろう。いくら考えても謎は深まっていくばかりだ。
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