それは泡沫の……

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「うふふ……さとーさんっ」  少し舌足らずなその呼び方。彼女が発するいつもの合図。すっと顔を離して、俺の身体を視線でまさぐる。礼儀正しく、丁寧で、何より愛らしい。そんな彼女が、彼女の瞳が。気付くと妖しい光で満たされていた。真っ赤な耳を、火照った顔を、期待に震える肩を。そして、俺の股間を。一つ一つ、見つめていって。  ぷるりと柔らかな唇を。その様を、まるで俺に見せつけるかのように。ゆっくり、ゆっくり、舐めていく。真っ赤な舌がなぞった跡は、ぬるりと淫らに濡れていて。ついさっきまでは透き通るようだった唇の艶やかな変貌に、俺は呼吸すら忘れていた。
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