エピローグ

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結局、私はお祖母ちゃんの宣言通り、月曜の朝まで縛られたまま放置された。 猿轡だけは三時間ごとに珠洲姉さんと瀬里姉ちゃんが代わり番こに回って来てはずして呉れたが、それは本来私の口の中の酢辛子を補充する為であって、決して休息を与えて呉れる積もりでないことは解っていた。 それでも猿轡が外され息を吸わせて貰えることは有り難かった。尤も、その度にカラカラに乾ききった口に無理やり大振りの湯呑み一杯ずつの酢を飲まされたのは流石に辛かった。たとえそれが唯一の水分と栄養の補給だったとしても、そんなに酢は飲めるものではない。と言っても、縛られて抵抗できない私は無理やり口元に湯呑みを押し付けられてしまえばどんなに時間を掛けてでも飲むしかないわけだ。 そしてその度に猿轡をしっかり噛ませ直されて縄も締め直される訳である。 …まるで旅館の仲居さんのようにきっちりと着物を着て襷に前掛けをした珠洲姉さん、瀬里姉ちゃんは終始無言で黙々と私の猿轡を外し酢を飲ませ、それが済めば酢辛子を補充した上で元通りに私の口に詰め布をして手拭いを噛ませて緩みを締め直し最後に鼻から顎先までを手拭いで締め上げて後頭部で縛り上げる… 思えば珠洲姉さん瀬里姉ちゃんも一歩間違えば確実にお祖母ちゃんの逆鱗に触れていたはずだ。 殊に瀬里姉ちゃんは私の隣で一緒に緊縛放置されていても全然おかしくない… そう考えると二人の殊勝そうな態度にはお祖母ちゃんへの畏怖の念がありありと見てとれた。 とは言え、この二人が助けて呉れなかったらいったいどうなっていたか?そう考えると、きっとこうやってお祖母ちゃんの言い付け通りに私に無理やり酢を飲ませに来るのもこれ以上私が酷い仕置きを受けない様に私を守って呉れる為と思って感謝するのみだった。
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