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「何時だと思ってんの」
後ろから突然声をかけられ、
真樹は反射的に立ち上がり、振り向いた。
23時の公園は思ったより暗く、
よく目を凝らしてみないとそれが誰だかわからない。
見慣れた顔が月の光に照らされた。
「なんだ、智くんか」
アルバイト帰りらしき幼馴染の顔に少し安心し、
真樹はベンチに座りなおした。
「なんだとはなんだよ」
と口を尖らせた智も、隣に腰を下ろした。
「こんな時間にどうしたの?」
座るや否や、
智は急に心配そうに眉を下げ、聞いてきた。
真樹より4歳年上の智は、今年で22歳。
高校生の真樹からしてみると立派な大人なのだが、
まだ幼い子どものようにコロコロ表情を変える。
「さっき、ここで失恋したんだ」
と、できるだけ明るい声で言った。
「失恋した」と言った自分の声は、
笑ってしまいそうなくらい明るかった。
案の定、智は「そっか」と、
下がった眉尻をもっと下げて呟いた。
数時間前、
真樹は2年と5か月付き合っていた彼に
別れを告げられた。
それはもう、あっさりと。
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