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「ああ、決まった。契約完了だ」
掌の穴から買い物のレシートほどの紙がひらりと落ちる。それをスーツ男のジャケットのうちポケットにねじ込むと、スーツ男はテーブルに伸びていびきをかき始める。
俺は鳴らない手を打つ。
「さて、商談はまとまるわ問題は解決するわ。最高の夜だな。さあ飲むぞ」
「お前が酔うまで飲ませたらうちはすっからかんだ」
キュッキュ、という規則正しくグラスを磨く音がする。
俺は最後のビールを飲み干す。夜が更けすぎてしまう前にこの人間を店へ運ぼう。
どうせ約束だの何だのこの男は覚えちゃいないだろうから、逃げないようにしておかなくては。
「武器屋、そいつの名前はどうする。まさか真名を名乗らせやしないだろ」
「ああ、そうだな」
真名はわかりやすく言うなれば平たくその者の本名の事だ。魑魅魍魎の渦巻く人外の者の社会ではそれを相手に知られることは命取りになる。
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