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「よしてくれ!摘まみ出すとこだ」
電球頭がパチパチ顔で抗議する。
「いいだろ。どうせ俺の顔見ても驚けないほど酔ってるぜそいつ。なあ」
スーツ男は目を細め眉間をぐっと寄せながらこちらを見た。
「おごるよ。今日はいい日だからな」
「ぞおさん…」
案の定恐れるどころかスーツ男は据わった目でこちらへやってくると無邪気に俺の鼻を触る。
「わあ…これ材質なに?…すごいなあすごいなあ」
素っ頓狂に言って俺にまでほおずりしようとするのでそれは額を押し返し避ける。
「材質は皮膚さ」
「革かあ。すごいなあ…マスターいっぱい!」
何に対してもきゃっきゃと喜ぶこの珍客は美味いうまいと電気ブランばかり飲み干した。
カクテルもあると店主に言われても「電気ブラン!」と元気よく宣言し終いには店主もしょうがない奴だ、とまんざらでもなく笑う。
「僕はあ、今日からムショ…なんです」
「なんだムショにぶちこまれるようなことしたのか」
尋ねてもいないスーツ男の身の上話がはじまると店主の手が水のグラスを差し出す。
男はそれをよく見もせず掴み飲み干すと「うすい!」と感想を述べる。
「ムショ・ク!仕事がないんですー!ヘヘッ」
「それでお前大丈夫なのか」
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