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地元の大学の歴史研究室と郷土博物館の合同チームによる発掘作業は、ほとんど終わっていた。
発掘の範囲は、ロープで升目状に区画されている。ほとんどの区画が調査済みで、そのあと綺麗に均されていた。
作業開始前に、佐々木先生が今までの発掘成果をまとめた資料や写真を配布した。
この場所に関して具体的に記述した史料はなさそうで、誰と誰がいつ戦ったのかすらはっきりしないそうだ。
写真には、かなりの数の人骨のカケラ、武具の一部らしき残骸、古い卒塔婆の朽ちかけた破片などが写っていた。弓矢を受けたと思われる傷跡がある骨。頭部がなく、頚椎が刃物で損壊された骨。馬のものらしい骨。それらが広範囲に散らばっていたそうだ。
わたしたちは学芸員の先生の指示のもと、発掘が終わっていないいくつかの区画に散らばって、土を掘り始めた。
目ぼしい何かが出土する気配はなかった。
わたしたち高校生はただの「お客さん」。しかも完全に乗り遅れた乗客だ。
スコップの先で砂に絵を描きだす人。雑談に興じる女子。スコップを刀代わりにチャンバラを始める男子。だらけた空気。暑い。
佐々木先生の厭でも目立つスキンヘッドが、汗で太陽光線をテラテラ反射させながら近づいてきた。
「樫飯さん、なにか見つかったかな?」
「全然です」
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