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「やあやあ我こそは、陶晴賢の家臣、大内清志丸なるぞ。こたびの桂元澄の裏切り行為、断じて許し難し。よって天に代わって成敗致す。覚悟!」
そう叫んで、プラスチック製の小さなスコップを振り回し、近くにいる男子に、手当たり次第に襲いかかろうとしている。あんなスコップでも頭に直撃でもしたらただでは済まないが、襲われる方は冗談だと思ってゲラゲラ笑いながら逃げ回っている。
樫飯さんがオレに笑いかけた。なんか久々に見る樫飯さんの笑顔だ。
「戦国武将ゴッコしとる。高橋くん面白い」
ヤツが面白い? オレのほうが一億倍面白いよ!
「そんなに面白い? 幼稚なチャンバラごっこじゃろ」
「だけど妙だな」と佐々木のハゲが。樫飯さんとオレの愛の語らいにヤボな割り込みはやめてくれんかのー。
「何が妙なんですか?」ホラ、樫飯さんが食いついてしまったじゃないか。
「ここだけの話、高橋はいつも日本史赤点だからさー」
「思いっきり個人情報漏洩だ」と樫飯さん。
「まあ公然の秘密だけど」とフォローしてやるオレ。
「だからさ、元就ぐらいは知ってるだろうけど、陶晴賢を知ってるとは思えないんだよね」
陶晴賢は中国地方一帯に勢力を広げた武将で、毛利元就と戦って厳島の戦いで敗北し自害した人物だ。
「覚えてる訳がない、あの高橋が」
そうオレが頷くと樫飯さんは目を見開いた。
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