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後ろの席から彩乃ちゃんが、お箸の尻で背中をツンツンしてくる。
「ねえねえ、この中にほんとに霊が取り付いてる人もいるんじゃね?」
「え、ガチでってこと? いやいや、ないでしょそれは。普通にふざけてるだけっしょ」
「うむ、やはりそうでござるか」ニヤける彩乃ちゃん。
「取り憑いた? ってゆうか口の横にごはんつぶ」
「え? まじ?」見当違いの場所を探る彩乃ちゃん。
「まじでござるよ、ここ、ここ」わたしは自分の眉間を指差す。
「さすがにそこはないでしょ」とむくれる彩乃ちゃん、可愛い。
ちなみに彩乃ちゃんとわたしは席替えのたびに裏技を駆使して近い席を死守している。ただのダンス仲間を越えた大切な友人だ。
ごはんつぶを取って口に放り込み、照れ笑いする彩乃ちゃんを微笑ましく眺めながら、わたしは内心ちょっと不安になっていた。もしかするともしかする。だって、こないだの二人は普通じゃなかった。
ねえ田中くん。
綾姫って、いったい誰なの?
それと、いつになったら告白するの。するのしないの、どっちなん。
こっちは、心の鍵を開けて待っているのに。
なーんちゃってね。
「瑠香ちゃん、なに一人でニヤついてるの」彩乃ちゃんするどい。
「な、なんでもござらぬ」
「憑依してる!」
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