3 ござるウイルス

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 そう呼ばわると同時に、気合もろとも佩刀を抜き、(にっく)き綾姫の(かたき)に斬りかからんとするも、なにゆえか腰に下げたはずの刀がない。  拍子抜けして己の姿を見れば……黒黒として貧相な、どこの国の衣装ともしれない服を着ている。なんなのだ、この貧相な装束は。  清志丸も綾姫も、同様で、綾姫はといえば着物ではなく、何やら短い履物から、その妙なる美脚を剥き出しに、白日のもとに曝け出しておるではないか!  綾姫、そなた気でも触れたか!  見ればその隣の太り(じし)の権藤とかいうおなごも、同様の履物から野太い足を出して平然としておるではないか。これは一体何事か。  ワシは、綾姫の真白き御御足(おみあし)に吸い寄せられる我が眼差しを、懸命に引き剥がして綾姫の顔を見つめ、苦言を呈した。 「綾姫殿、そなたの御御足、まっこと尊くもお美しい。然れどもその目出度き御御足、かように軽々に人目に晒すものではござらぬ」  そう叱責しながら、ワシの鼻腔より、冷たき液体がツツと一筋流れ出た。これは鼻血か。ワシともあろうものが、不覚にも興奮…あ… 「おーい。田中くーん。大丈夫ー?」  ペチペチと頬を叩かれて目を覚ます。 「あれ、オレ、一体……」 「樫飯ちゃんの御御足がどうたら、って言ってるうちに鼻血を出して気を失ったんだよ。覚えてない?」と権藤。     
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