3 ござるウイルス

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「田中、ごめんな」そう言い残して、部室を出ていった。  お前、清志丸なんだろ、という言葉は胸のうちに残った。 「高橋くん、急にどうしたんだろ?」 「さあ、トイレじゃね?」  突如脳裏に鮮明な記憶が蘇り、オレは、反射的にガバッと上体を起こそうとしてまた気が遠くなり――気がつくと、なにかひんやりとして柔らかいもののうえに頭を載せて寝ていた。  おお、この感触はもしや! 「どさくさに紛れて膝枕してもらってるー」と権藤が冷やかす。  少々冷やかされたぐらいでこの至福を手放す気にはなれない。  これで権藤さえいなければ、絶好の告白のチャンス――鼻血出して鼻栓詰めてる時点でありえないわ。  はーあ。今日も(コク)れずじまいか。  オレは目をつぶったまま、具合が悪い(てい)を装う。  せめてこの至福を一秒でも長く味わおう。ああ、よきかな、よきかな、このまま死んでもいいかも。目を閉じたまま意識を後頭部に集中しようとしたが、エロ妄想の炎に水をぶっかけるように、オレの意識を陰惨な記憶が塗りつぶしていった。  あの日桜尾城が(すえ)軍の残党に襲撃され、女子供まで(みなごろし)の目に遭おうとしていた。     
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