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「教師に二言はないわ。オレは腐っても教育者だからね。教師としての愛情と男女のそれぐらい区別できますから」
「ふん、口だけは達者じゃの。ともあれ我が姫におかしな手出しをしたら、容赦なく斬る。よいな!」
そう言い放った田中くんは、ドスドスと歩いて席に戻り、どっかと座って腕組みをし、佐々木先生をギロッと睨みつけた。
クラス中が呆気にとられて田中くんを見つめる。
「いまの、何?」
「我が姫って言ったよね?」
「ひょっとして愛の告白と違う?」
「ひゅー、朝っぱらから激しいのう!」
「それより、戦国武将の再来じゃろうが」ワクワクしすぎでしょ。
「高橋は? おらんのかい。まったくつかえんヤツじゃのー」
そういえば高橋くんの姿が見えない。大丈夫なのかな。
騒然とするクラス中を睥睨しながら、田中くんがもう一声、胴間声を張り上げる。
「このさい御一堂にも申しておく。各々方、くれぐれも樫飯殿を変な目で見んようにの!」
クラス中が興奮の渦に。わたしは恥ずかしさのあまり俯くしかない。いやだ、頬が熱い。全身がカッカする。そこに遠慮なく冷やかしの言葉が降り注ぐ。
「瑠香ちゃんお幸せに!」
「オメデトー!」
「いや、めでたくないじゃろ。迷惑じゃろ。なあ樫飯さん」
めでたいともめでたくないとも言いづらい。
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