4 保健室の戦国武将

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「教師に二言はないわ。オレは腐っても教育者だからね。教師としての愛情と男女のそれぐらい区別できますから」 「ふん、口だけは達者じゃの。ともあれ我が姫におかしな手出しをしたら、容赦なく斬る。よいな!」  そう言い放った田中くんは、ドスドスと歩いて席に戻り、どっかと座って腕組みをし、佐々木先生をギロッと睨みつけた。  クラス中が呆気にとられて田中くんを見つめる。 「いまの、何?」 「我が姫って言ったよね?」 「ひょっとして愛の告白と違う?」 「ひゅー、朝っぱらから激しいのう!」 「それより、戦国武将の再来じゃろうが」ワクワクしすぎでしょ。 「高橋は? おらんのかい。まったくつかえんヤツじゃのー」  そういえば高橋くんの姿が見えない。大丈夫なのかな。  騒然とするクラス中を睥睨(へいげい)しながら、田中くんがもう一声、胴間声を張り上げる。 「このさい御一堂にも申しておく。各々方( おのおのがた )、くれぐれも樫飯殿を変な目で見んようにの!」  クラス中が興奮の渦に。わたしは恥ずかしさのあまり俯くしかない。いやだ、頬が熱い。全身がカッカする。そこに遠慮なく冷やかしの言葉が降り注ぐ。 「瑠香ちゃんお幸せに!」 「オメデトー!」 「いや、めでたくないじゃろ。迷惑じゃろ。なあ樫飯さん」  めでたいともめでたくないとも言いづらい。     
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