時は進む

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私はとある国の国会議員である。 この国では来月、大統領の選挙が行われる。国会があると言えども、政治の権力はほぼ大統領が担い、それだけに国民の関心が強い。立候補者は二人で、現与党が推すA氏と、最大野党である自由党の党首であるB氏との一騎討ちの構図だ。どちらも政界では広く知られており、周りからの信頼も厚いものだった。 ある日、街頭を歩いていると、聞いたことのある馴染み深い声がする。声のする方を向くと、電器店のテレビの方で、大統領選に向け、それぞれの意見を述べる二人の姿があった。 司会者: それでは、会話も煮詰まってきたところで、お二人の公約を要約して述べて頂きましょう。 A氏: 私は、「どんな圧力にも屈しない」をモットーに、国家の安全を保証します。 B氏: 私は、「皆が自由に平等に暮らす」をモットーに、民主主義社会を目指します。 司会者: ありがとうございました。それでは… テレビに釘付けになっていたが、ふと我に帰って周りを見てみると、もう薄暗くなっていた。空は黒々と渦巻き、月は不気味に笑っているようだった。 次の日、与党系の議員達で飲み会が行われることになった。私は三派閥の議員を抱えており、この飲み会には、私のような議員達が集まっている。 「ちょっといいかね。」 どきっとして後ろを向くと、そこにはA氏がいた。 「君に挨拶が遅れてしまってすまない。今回の選挙は、国民投票の後に議員投票が行われる。」 この国では、大統領を選ぶとき、まず国民は議員が信頼できるかどうか議員に投票する。その後、当選した議員が投票を行い、大統領が選ばれることとなる。 「そこでだ。君達の票は私の当選に不可欠となる。よろしく頼むぞ。くれぐれも変な気を起こさないように。」 私は、取り敢えず「分かりました。」と返事をした。A氏は、足早に去っていき、別の議員のもとへ行っているようだった。
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