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「拝啓 お家の仕事のことで本家にお戻りになられたとお聞きしこちらに手紙を差し出した次第でございます。中村様におかれましては困難の日々が続くことでしょうが何卒のご健勝を祈念しております。さて日頃決して雄弁でもない筆不精のわたくしが筆を起こしたのは、中村様、あなたにわたくしの罪悪を打ち明けねばならぬと思ったからでございます。尤も中村様はどなたかお家の方の口からすでにわたくしの醜聞は耳にしていることでしょう。ですからこれは告白の体をとった愚かな自己弁護に当たるのではないかと何度も手紙を書くべきか思い悩んだものでした。しかしそれでもわたくしは中村様に、己のことをわたくし自身の口から知っていただきたかったのでございます。どうかわたくしの勝手をお赦しくださりますよう」
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