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「あなた様に取り違えてほしくないのは、わたくしは暴力のために泣く泣くお父上の情婦になったのではないということです。いえむしろ罪悪なのはわたくしの方でございました。幼いころから召使に過ぎないこんな田舎娘を大切に養育してくだった、あなたのお父上をしつこくお慕いしたのは何しろわたくしの方でしたから。お父上は、いえ、吉兵衛様は最後まで己の胸にわたくしを抱いたことを深く悔やんでおりました。そんな吉兵衛様がわたくしに愛の悦びを与えて下さったのはひとえにわたくしのことを憐れんでのことだったのです。ですから罪悪なのはわたくしの方でございます、何卒あなたのお父上を恨みに思わないでくださいますよう」
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