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「それからわたくしは己の罪悪を何度も何度も責め苛みました。わたくしが己の愛する人の気配を己のために身勝手にも他人様に重ねたためにかようなことになったのです。わたくしは罪な女でございます。何度あなた様のことを嫌おうとしたことでしょう。何度あなた様のことを忘れてしまおうとしたことでしょう。しかし己の心は己の頭に従ってくれぬものなのでした。あなた様があまりにやさしいものだから、もしかするとあなた様はわたくしを赦してくださるのではないかと一縷の望みをかけてしまったのです。そのことではわたくしはあなた様を恨みに思います。わたくしに叶わぬ淡い期待をさせたあなた様を憎みます。しかしそこがわたくしのあなた様を愛する所以でもあったのでした。そうしてわたくしはその如何ともしがたい矛盾に毎日毎日苦しんでいたのでした」
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