狩り

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チラチラと視線を送ってくる男達が数人いるのが分かる。 ジャケットを整える振りをして、結婚指輪を外したのを私は見逃さないよ? その男が私の斜め後ろに立った。 「お一人ですか?」 私は、少し驚いた振りをし 「いえ。友人と約束してるんですけど、人が多くて分からないから今、連絡しようかと思ってたんです」 と、店内を見渡した。 「今日はイベントだから、見付けるのに苦労しそうですよ。 それまで、一杯どうですか?」 「ええ。構いませんけど、友人に連絡入れてみますね」 私は携帯でメールを打つ素振りをし、タイマーセットした。 「俺も同じ物を」 男は店員にドリンクをオーダーし私の隣の椅子に座った。 「ところで友人とは男性かな?」 「まさか!女友達ですよ。どうしてです?」 「男性だったら、その方に失礼かと気になったものだからね」 その方にじゃなくて、貴方自身が気になるんでしょう? 笑えるよ。 カウンターに置いた、携帯が鳴った。 「ごめんなさい。失礼」 私は電話に出る為、席を立った。 電話では無いけどね。ただのアラーム。 電話を終えた振りをし カウンターへ戻るとオーバーに溜息をつきバーボンを飲み干した。 「どうかしたのかい?」 「ドタキャンよ。彼女との約束は始めからアテにしてなかったけど……。 割りと多いの。久しぶりに会おうって約束してもドタキャンされる事」 「そうか。残念だったね。 でも、せっかく来たんだから楽しもうじゃないか」 「そうね。こうして貴方とも知り合えたんだから」 私は、男の方へ身体を向けて微笑んだ。 生唾が聞こえそうだよ? 既婚者男。
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