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「で?今夜は何故ここへ?」
私は男へ聞いた。
「今日のイベントの主催が同級生なんだよ。ほら、あのブースの中にいる青いキャップの奴。割りと有名なDJだよ」
と指をさした。
「え?どの人?」
男の視線がブースに向いてる隙に私はハンドバッグの中に手を入れ、手探りにピルケースを探し当てカプセルを取り出した。
「ああ!分かった!あの右に居る人?」
「そうだよ」
店員の視線も確認すると、男のグラスにカプセルの中身を流し入れ、空のカプセルをバッグに戻した。
「私、音楽には疎くて。聞きながら、お酒を飲んでる方が好きかも」
「いいさ。人それぞれだからね。
もう一杯飲むかい?」
「有り難う。頂いちゃおうかな」
と、足を組み直した。
太腿から、見えそうで見えない下着が好きでしょ?
男の視線が一瞬下へ落ちる。
「今夜は、ご馳走するから好きなだけ飲めばいいよ」
「本当に?でも私……あまり酔うと危険だから……」
両手を頬に当てて、両肘で胸の谷間を強調して見せる。
「危険?大丈夫だよ。酔ったら俺が介抱してあげるから」
と、男は笑った。
下心丸出しの下品な笑い。
「でも……初対面で悪いから、後一杯飲んだら帰ろうかな」
「そんな事、気にしなくていいから。
まだ時間はあるんだから。ね?」
何を焦ってるの?
私には時間は、たっぷりあるけど残念ながら貴方には後一時間も無いよ?
これが、最期の晩餐になるのだから。
「そう?貴方って優しい人ね。
有り難う」
バーボンを出してくれた店員にお礼を言った。
「キミみたいな綺麗な女性に優しく無い男なんている訳ないだろ?」
私は、煙草に火を着けると煙を深く吸い込み吐いた。
「そんな事ないのよ?見て」
私は、男に唇の横を近付けて見せた。
「唇の右側のにアザがあるでしょ?殴られたの。化粧で誤魔化してるけど、ファンデーション落としたらもっと目立つから隠すのが大変……」
「酷い事する奴が居るんだな!
女に手を上げるなんて最低な男だ!」
信じちゃって!これもメイクですけど?
私は、笑いを堪えた。
手を上げる男は最低?
じゃあ、浮気する男は最低じゃないのか?
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