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同棲の始まり
和馬が『一緒に住む』宣言をしてから1ヶ月。諸々の手続きやら親の説得やらを済ませて、奴は本当にうちに越してきた。
広々と使っていた2Kの部屋も、洋室を和馬に取られてしまったので和室だけしか使えなくなり、半年経たぬ間にずいぶんと手狭になってしまった。
「いいか。家賃は折半、炊事家事洗濯は交互にやるからな」
「分かってるって。同棲初日だし、今日はアタシがご飯作るわよ、ダーリン」
同棲、その言葉に一瞬ドキッとしたが、そういう浮かれた感情もいまいちピンと来ていない。一緒に住むと言っても、地元にいた時も家族同然に過ごしてたからあまり変わらないし。
部屋に運び込んでから手付かずな段ボール箱をそのままに、和馬はキッチンで夕飯の支度を始めた。ご丁寧に実家から持ってきたエプロンを付けて冷蔵庫を漁る。その姿や雰囲気が何とも新妻のようだったが、如何せん相手は和馬である。滑稽以外の何物でもない。
「爽太、野菜も肉も何もないんだけど……。今まで何食べて過ごしてたの……。ちゃんと食べてた?」
「食べてたよ。……卵かけご飯とか、お茶漬けとか」
和馬は大きなため息を一つ吐いた。
「やっぱり、ホントは料理できないんでしょ。してるとこ、ほとんど見た事ないし」
「ちがっ、違う!! できないんじゃない、……し、しないだけ! この前オムライス作ったじゃん!」
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