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空いた和馬の右手がテーブルの上へと伸びる。嫌な予感しかしない。
「せっかく風呂入って綺麗にしてくれたんだもん、『据え膳』はちゃんと盛り付けてから食べないとね」
ホイップされたクリーム入りの容器を片手に俺を見下ろす。
……おい、何する気だ?
「か、和馬、嘘だろ……」
小さめの木ベラでクリームを掬うと、奴はなんの躊躇いもなく俺の胸元へとその塊を落とした。
「ヒッ」
「あ、冷たかった? でもクリームは冷やしておかないとドロドロになっちゃうからね。ほら、こんなふうに」
そう言ってヘラでクリームを満遍なく延ばすように塗り付けてくる。薄く塗られた箇所は体温で溶かされ液体に戻ってしまった。
「ううっ、ベタベタ……、キモい……」
「あははっ。昔からハンドクリームとかボディークリームとか、そういうやつ苦手だったもんね」
「知ってんなら拭いてほしい……」
ケラケラ笑っているが、クリームを塗る手を止めてくれそうにない。
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