3章

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彼女は、食べ過ぎてよく体調を(くず)すレスが心配なのだ。 この国――ストリング帝国では、料理する人間などいない(いや、一人いた。グレイだ)。 すべて機械が作ってくれるからだ。 オート・デッシュと呼ばれる機械にカードリッジをはめ込み、後は食べたい料理のスイッチを押せば、カロリー計算されたものが出てくる。 便利であり、手間も時間もかからない、ストリング帝国の発明品の一つである。 だがグレイは、オート・デッシュのことを、あれは人間のエゴだと言い、けして使おうとはしない。 アンは任務で城壁の外から戻れないときに、何度か軍から支給(しきゅう)されたスティックタイプの携行食(けいこうしょく)を食べたが、とても味気なかった記憶があった。 それはオート・デッシュで作られたものだったからだ。 いくら完璧に計算され、簡単に栄養が取れるといっても、やはり食事はグレイの作ったものがいい――。 アンは、いちいち手間をかける彼のことを疑問に思いながらも、心のどこかでは賛成していた。 結局、レスはドライソーセージを食べた。 その横で、ストラが大きくため息をついている。 アンはそれを見て、微笑(ほほえ)ましかったのか、()れない笑顔を浮かべていた。     
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