6章

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6章

ストリング帝国から出発して数日後――。 行軍を続ける総勢50人のストリング兵たち。 日差しは強いが、空気が乾燥しているため、暑くはない。 むしろ夜が近づくと冷えるくらいだった。 無限に広がる砂漠には、所々にかつての文明の(あと)が残されている。 崩れているビルや住宅、半壊(はんかい)している道路。 それらを見ると、以前にはここに人が住んでいたのだと思わせた。 「そういえば知ってるか?」 リードがアンの横にやってきて、声をかけてきた。 いつも通り軽快な言い回しで言葉を(つな)げる。 「最近ここらで、キメラを相手に一人の人間が戦っているって話」 リードがいうに、その男は緑色のジャケットを着ていて、体が黒と緑の炎に包まれているそうだ。 「その炎で、何体ものキメラを焼き尽くしているのを見た奴がいるんだってよ」 「人間の体から火が出るわけないだろう。それに火は赤いんだ。黒と緑の炎なんてバカげてる」 その話を聞いたアンは、(あき)れながら返した。 そんなアンの様子を見たリードは嬉しそうに言う。 「いやマジだって。他の部隊も襲われたっていうぜ」 「その男の狙いはキメラじゃないのか? どうして人間を襲う」     
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