プロローグ

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追いついた怪物は、(よだれ)()き散らし、少女の顔がベタベタになる。 父親が手を引いて立たせようとしたが、少女は腰を抜かしてしまい、動けないでいた。 怪物が(おの)のように膨張(ぼうちょう)した腕を振り下ろす。 次の瞬間――。 少女は血塗(ちまみ)れになった。 正確にいえば、彼女を(かば)った父親の血を頭から()びたのだ。 首が()ね飛ばされた父親を見て、少女の思考が停止する。 動かない少女の頭上に、再び腕が落とされそうになったとき――。 銃声と共に、怪物の頭が弾け飛んだ。 他にいた怪物の大軍も、すべて頭が吹き飛ばされて倒れている。 少女は、何も考えずにただそれを見ていた。 「大丈夫かい?」 そこにはミルキーハットを被った男が立っていた。 大きな目をギョロつかせ、手に持ったパンコア・ジャックハンマーを下ろすと、着ていたロングコートを少女に羽織らせた。 「もう平気だよ、こんなときでも泣かないなんて、君は強いね」 ハットを被った男は少女に語りかけた。 それから、放心状態の少女を抱きしめて、言葉を続ける。 「君の名前を教えてもらえると嬉しいな」 優しく、できる限り穏やかに――。 今彼にできることは、それだけだった。 抱きしめられた少女はポツリと返す。     
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