128人が本棚に入れています
本棚に追加
追いついた怪物は、涎を撒き散らし、少女の顔がベタベタになる。
父親が手を引いて立たせようとしたが、少女は腰を抜かしてしまい、動けないでいた。
怪物が斧のように膨張した腕を振り下ろす。
次の瞬間――。
少女は血塗れになった。
正確にいえば、彼女を庇った父親の血を頭から浴びたのだ。
首が刎ね飛ばされた父親を見て、少女の思考が停止する。
動かない少女の頭上に、再び腕が落とされそうになったとき――。
銃声と共に、怪物の頭が弾け飛んだ。
他にいた怪物の大軍も、すべて頭が吹き飛ばされて倒れている。
少女は、何も考えずにただそれを見ていた。
「大丈夫かい?」
そこにはミルキーハットを被った男が立っていた。
大きな目をギョロつかせ、手に持ったパンコア・ジャックハンマーを下ろすと、着ていたロングコートを少女に羽織らせた。
「もう平気だよ、こんなときでも泣かないなんて、君は強いね」
ハットを被った男は少女に語りかけた。
それから、放心状態の少女を抱きしめて、言葉を続ける。
「君の名前を教えてもらえると嬉しいな」
優しく、できる限り穏やかに――。
今彼にできることは、それだけだった。
抱きしめられた少女はポツリと返す。
最初のコメントを投稿しよう!