1章

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そして気まずそうに、手を振ってその場からいなくなる。 「あいつ……思ったとおりだ」 アンが、リードの背中に向かって(つぶや)いた。 その後、アンが自宅に到着。 丸太で作られた小さな家。 この国――ストリング帝国では、アンが住むこの家以外は、多くの家がレンガ作りである。 この国の高度な科学力からは信じられないくらいオールドタイプの住まいだが、そんな外観(がいかん)の街には、機械人形が(あふ)れている。 機械人形は街で何をしているのか? それは人間の代わりに労働をしているのだ。 だから、この国の人間は働いていない。 すべて機械がやってくれるからだ。 そのため、生活のコストは下がり、お金がなくても人並みの生活は保障されていた。 アンは、自宅のドアを開いて中へ入る。 「おいおい、ただいまくらい言ったらどうなんだよ」 そこには、大きな目をギョロつかたせた男が、ソファに座って本を読んでいた。 「グレイ、(かぎ)くらいしないと」 グレイは言われたことに、もっともだと返すと、アンがポツリと言う。 「大事……戸締(とじま)りは大事」 男の名はシープ・グレイ――。 3年前から、アンと共にこの丸太小屋で暮らしている。 グレイは、すでに30代後半のはずだが、10歳は若く見えた。     
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