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兼子 清雅 (かねこ きよまさ)
『警察官』と言えば、聞こえはいいかもしれない。正真正銘の正義の味方。わざわざ憧れてなる人もきっと、たくさんいるんだろう。
だけど、俺はそんなんじゃない。そんな、格好いいものじゃなかった。
やる気とか、意欲、とか。
そんなものが、俺には端からなかった。
給料もいいし、将来も安泰っていう理由だけで決めた職業。危ないことは好きじゃないから、無難に交番勤務をして。プライベートでは無難に恋愛して、無難に結婚して。そして無難に定年退職して年金をもらいながら、貯金を崩して生活して。最期は妻と子どもと、できれば孫に囲まれて死ぬことができたらいいんじゃないかなぁーって。
そんな大したことはないけれど、よくある幸せな風景っていうのが、俺の人生の理想図だった。
だけど、そう上手くいくわけなんてない。人生の一日にも満たない一瞬の出来事が、思い描いたルートを百八十度変えてしまうことだってある。
なんてことを、思い知るのは。
貴方の飴色の瞳が俺の頭から離れなくなったあの日から、もう少し後の話。
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