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 晴樹と一緒にいる時間は、とても楽しいものだった。ただ、俺自身が友人という一線を越えたいとまで思っていたかどうかは、自分のことではあるが、よくわからなかった。  でも、と思う。たぶん、手をつなぐことも、キスをすることも、あいつから請われれば、きっと嫌な気持ちはしなかっただろうな、と思う。  本当に今更ではあるけれど。  もしもっと早くに自分の気持ちを確かめられていれば。  もしもっと早くにあいつの気持ちにこたえてあげられていれば。  未来は変わったのだろうか。  ぽっかりと胸に開いた喪失感。  それが、親友を失った悲しみからくるものなのか、それとも最愛の人を失った悲しみからくるものなのか、確かめるすべは、もうない。
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