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「先に事情を教えてもらえないか」こんな突拍子もないことを俺に頼むんだ、それ相応の理由はあるんだろうな、と無言で晴樹に訴える。 「実は、また女子から告白されたんだ」  自慢話から説明は始まる。容姿端麗、勉強もスポーツもそつなくこなす晴樹が、女子から高い人気を博し、絶え間なく告白を受けていることは周知の事実だ。すっかり慣れてしまった俺は、「また」という単語を受け流し、黙って先を促す。 「タイプじゃなかったから断ったんだけど、どうも相手があきらめきれないみたいで。それからも何度か声をかけられて」  友人の疲労のにじんだ口調から、声をかけられたという生易しいものではなかったのだろう、と俺は想像する。しつこく付きまとわれるぐらいされたに違いない。 「部活に集中したいからって言えば、邪魔にならないようにするって言われ、勉強も忙しいからって言えば、一緒に勉強しようって言われ、実は気になってる人がいるんだって言えば、じゃあその人の名前を教えて、わたしが説得するからって言われて」 「重いな」 「なかなか手ごわい相手だよ」晴樹は困ったように笑う。「気になる人がいるってうっかり口を滑らせてからは、その相手が誰か、しつこく訊かれるようになったんだ。ずっとごまかしていたんだけど、それもそろそろ限界で。こうなったら、もう別の人と付き合うぐらいするしかないんじゃないかと」
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