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「事情はわかった」しかし、どうしても腑に落ちない点がひとつある。「で、どうして俺に白羽の矢が立つ?」  そこはふつう、女子に頼む場面だろう。同学年だけではなく、先輩後輩にも顔の広いこいつのことだ、協力してくれる女子のひとりやふたりいるはずだ。 「女子じゃだめなんだ」と晴樹。 「どうして」 「実は、中学の頃にも一度同じことをしたことがあってね。仲の良かった女の子に、恋人のふりを頼んだんだ」  うっすらとオチが見えた。 「初めの頃はよかったんだ。だけど、だんだん彼女の態度がおかしくなってきて、とうとうある日、本当の彼女にしてくれませんか、って俺に言ってきたんだ」 「ミイラ取りがミイラになったような感じか」  そりゃこれほど外見の整った男といっしょにいたら、うっかり恋心を抱いてしまっても誰も責められまい。俺は、名前も知らない彼女に同情する。 「女子じゃだめだ。なら、残る選択肢はひとつしかないだろ」晴樹は力強いまなざしを俺に向けてくる。「おまえなら、そういう間違いが起こることは万に一つもないはずだ」
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