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 俺は晴樹の母親から、一冊のノートを手渡された。見た目はなんの変哲もない大学ノートだ。 「あの、これは」  顔色の優れない晴樹の母親に、俺は戸惑いをぶつける。晴樹の家で、俺と彼の母親はテーブルを挟み、向かい合って座っていた。葬儀からしばらくたった日のことだ。 「あの子の日記です。どうしても、あなたに読んでもらいたくて」 「だけど俺には」  そんな資格がありません、と続けようとした言葉は、読んでみてください、という強い口調にさえぎられる。俺は口をつぐみ、手に持った大学ノートに視線を落とす。 「では、お借りします」  俺は断りを入れ、おそるおそるページを開いた。  罫線に沿って並んだ、整った字が目に飛び込んでくる。見慣れた字だ。授業のノートやプリントを貸してもらったときに目にしたのと、同じ文字。  日記には、他愛のない日常の風景がとりとめもなく綴られており、俺はぱらぱらと斜め読みをしていった。そして、とある日付の書かれたページでめくるのを止める。
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