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『4月27日  今日こそ、あいつに告白しようと思った。だけど、できなかった。呼び出したものの、いざあいつを前にすると言葉が出てこなくて。もし嫌われたらどうしよう、もし一緒にいることができなくなったらどうしよう。そんな最悪の考えが頭の中をぐるぐるとまわった。だから仕方なく、次善策でいくことにした。恋人のふりをしてくれっていう俺の頼みにあいつは目を丸くしていたけど、なんとか押し切った。うそをついたことに罪悪感はあるけれど、それ以上に、ふりでもあいつと恋人らしいことができるようになるかと思うと、うれしさのほうが勝った。明日からが楽しみ!』  日付を確認する。俺が晴樹から、恋人のふりをしてくれと頼まれた日と一致していた。ほかのページにも目を通していく。 『5月20日  今日はあいつとふたりで映画を見に行った。空席ばかりだったけど、俺はあいつのすぐ隣の席に座った。なにか言われるかな? と少しびくびくしてたけど、あいつはまるで気にしていないようだった。映画中は、手すりに置かれたあいつの手に触れたいとばかり考えていて、あんまり映画には集中できなかった。我慢するのもそろそろ限界かもしれない。だけど、あいつに嫌われないためにも、やっぱり我慢しないと。』 『5月25日  放課後、たまたまあいつのクラスをのぞいたら、あいつが机に突っ伏して寝ていた。そっと近づいてその寝顔をじっくり眺めていたら、柔らかそうな唇が目に入ったから、思わずキスをしてしまいそうになった。あれはやばい。衝動をおさえるのにすごい苦労した。キスは無理でも、手をつなぐぐらいだったら、冗談っぽくやればいけるかな? あいつの体温に触れたいと思ってしまう俺は、もう末期だ。』
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