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「あの子は、あなたをかばって死にました」  晴樹の母親の言葉に、俺は晴樹の最期を思い出す。  街中で突如上がった悲鳴。振り返れば、ナイフをでたらめに振り回す男が視界に移った。男は奇声を発しながら、俺と晴樹のいる方向へ走ってきた。  晴樹は、恐怖で足をすくませていた俺を庇い、ナイフで刺されて死んだ。 「大切だったあなたが無事でいてくれて、あの子はほっとしていることでしょう。私も、あの子の行動を誇りに思っています」  毅然とした口調で、晴樹の母親は言う。  晴樹の母親は、俺を責め立てることはしなかった。あんたがいなければ息子は殺されずにすんだのに、と。  俺の目から、涙が零れ落ちる。一滴、二滴。やがて堰を切って、俺は泣いた。声にならない叫びをあげた。  この世界に、晴樹はもういない。  再認識させられた現実は、受け止めるには重すぎた。
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