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ゆっくりと、ラディスはリムルに歩み寄った。
「南グリーンピアトの検事さんとお伺いしましたが、こちらに移られたのですか? 」
「・・・頼まれた案件が・・・ありますので、それが終わるまで・・・ここに・・・」
「そうだったのですね。私も、ずっと頼んでいた事件の真相が、ようやく判ってスッキリしたところです」
え? と、リムルはラディスを見た。
ラディスは、とても優しい眼差しでリムルを見ている。
「もう・・・隠れなくていいですよね? ・・・無実なんだから・・・」
「はぁ? ・・・なんの事でしょう? 」
少し、視線を反らしてリムルは尋ねた。
「検事になったのは、エデルを逮捕する為? 」
「王妃様を逮捕? どうゆう事でしょう? 何を言われているのか、分かりません・・・」
そう答えるリムルの目が、オドオドしているのをラディスは見逃さなかった。
「1つだけ言わせて下さい」
「はい・・・」
「無理をしないで下さい。貴女がいなくなれば、悲しむ人がいます。そのうちの1人が・・・私です・・・」
何を言っているの? と、リムルはラディスを見た。
「貴女に出会えてよかった・・・」
リムルはスッと視線を落とした。
「奥様を庇うお気持ちで、そのような事を仰っているのでしたら、やめて頂けませんか? 」
「え? 庇う? 誰を庇うと言うのだ? 」
「仮にも、王妃様でいらっしゃる奥様ですから。逮捕されては困りますよね? 何か、奥様に対して、疑惑でも感じられましたか? 」
「疑惑? 」
リムルはニヤリと口元に笑いを浮かべた。
「10年以上、ご一緒ですもの。何か、ご存知なのかもしれませんね」
「何が言いたいのですか? 」
「別に・・・」
少し呼吸を整え、リムルはもう一度ラディスを見た。
「それより、私と話をしていて大丈夫なのですか? 」
「え? 」
ふと、笑いを浮かべるリムル。
「・・・失礼します・・・」
憮然としたまま、リムルは去って行った。
去り行くリムルを目で追って、ラディスは少し恐怖を覚えた。
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