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「カリナス先生。私はずっと、この12年ミディアルを信じてきました。無実を証明したくて必死でした。そんな中、父と母が急死して、最愛の娘も同じ死に方をしました。何もかもがいっぱいいっぱいで、ミディアルのご家族にまで気が回らなかった事・・・後悔してもしきれません。・・・何があったのですか? 教えて下さい、お願いします」
必死なラディスをみると、カリナスは胸が痛んだ。
確かにラディスが懸命に、ミディアルの無実を証明しようと動いている事は耳にしていた。
先代の国王様と王妃様、そして娘のイディアルも「心不全」で亡くなっている。
どれだけ大変だったかは言わなくても判る・・・。
「国王様。私は、この地を離れて、もう二度と戻って来ません。なので、最後に、これは私からの餞別としてお話しします。その代わり、お約束して頂けますでしょうか? 」
「なんだ? 約束とは」
「ミディアル様をこれから、幸せにしてくれる事をお約束して頂けますでしょうか? 」
「何を言い出すのですか? 私は、ミディアルの幸せを一番に願っています。不幸になんてするわけがありません」
「そうですよね。ただ、お城にはエデル様がいらっしゃるご様子なので。もう、10年以上もずっといらっしゃる様ですから・・・」
「その事なら問題はありません。私はエデルに何の関心もしていません。勝手に城に押しかけてきて、勝手に再婚したと報道しているだけで、婚姻にサインもしていないし、何も認めていません。ただ、それを否定したところで、エデルは引かないでしょう。それに、何を仕掛けてくるか判りません。それなら好きにさせて、おけばいいと思っているだけです。城にいれば、行動が監視できますから」
カリナスは安堵の笑みを浮かべた。
「その言葉を聞いて安心しました。私は、ミディアル様には昔、随分と助けて頂きました。なので、絶対に幸せになって頂きたいと願っております」
「それは私も同じです」
カリナスはそっと頷いた。
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