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少し日が傾き始めている空を見上げるリムル。
「この世に神が存在するなら、感謝します。・・・でも・・・最後の決着は、私が・・・」
そっと、左手の薬指の指輪に触れるリムル。
「・・・失うのは怖い。だけどもういい・・・」
そっと、指輪を外すと、ぎゅっと握りしめるリムル。
「さようなら・・・」
ゆっくりと、リムルの手から指輪が波打ち際へと落ちて行った。
波打ち際に落ちた指輪を見て、リムルはそっと笑った。
つばの広い帽子をかぶって、リムルは歩き出した。
リムルが歩いてくると、反対側から歩いてくるラディスがいた。
リムルはラディスに気づかず歩いてくる。
ラディスはつばの広い帽子を被って歩いてくるリムルに気が付いた。
すれ違う瞬間。
ラディスは足を止めた。
だが、リムルは止まる事はなく、そのまま歩いて行った。
通り過ぎるリムルをラディスは立ち止り目で追った。
しかし、リムルは振り向くことなくそのまま去って行った。
背を向けて歩くリムルは、ラディスの視線に気が付いていた。
しかし、振り向く事はしなかった。
そのまま、テノリエが迎えに来た車に乗り込み、リムルは帰って行った。
日が沈む頃、ラディスはお城に戻ってきた。
「まぁ、国王様、どちらにいかれていてんですか? 」
驚いた声をあげたのは、長年お城に使えている使用人頭のリラ。
もう60歳を超える小柄な女性だが、シャキシャキしていて、縁の下の力持ちとしてお城を支えている。
専属の執事を置かないラディスにとって、リラは支えになってくれる大切な存在である。
12年前の事件の後も、ミディアルの無実を信じていると言って、ずっとラディスを支えているリラ。
最近では、ラディスの食事の管理もするようになっていた。
「あら? 国王様、どうしてそんなに濡れていらっしゃるんですか? 」
戻ってきたラディスは、随分濡れている。
あの後、海にでも入ったのだろうか?
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